「その、大切な人って誰?」



俺は思わず光里のほうを見た。

光里は興味津々でこっちを見ている。


…たぶん、そういう意味じゃねーな。

光里は好奇心でこんなこと聞いてるんだ。



そう感じて少しだけ虚しくなった瞬間に、青木の叫び声が聞こえた。



「河村、光里!!そろそろ練習始めるぞ!!」



「今行く!!」



俺は外にいる青木に叫んだ。

そして、座っている光里の手を引いた。



「光里、そろそろ行くぞ」



「うっ…うん…」



俺に引かれて部室を出て行こうとする光里に、俺は耳元で言った。



「大切な人は…まだ秘密」



光里はびっくりした顔をしていた。

そんな光里を見た俺は、思いっきり光里の背中を押す。



「はい!!

そんな顔しないで、行った行った!!」



「ちょ…痛いでしょ?」



光里。

俺はお前を一生守るから。


光里も俺と同じ気持ちか…?




.