「キャーっ!!」
「依知くん来たよ!!」
「こっち向いてー!!」
あの女子軍団はフェンスに掴まって叫んでいた。
なんか、人数も増えてる気がするのは俺だけか…?
「これって、俺が一発何か言ってきたほうがいいよな?」
俺は青木に視線を送る。
青木は大きく頷いた。
「まあな。
じゃないと、俺らや他の部活も集中して練習できねーだろ」
青木の意見は、俺の思っていることと同じことだった。
「分かった。
俺、行ってくるわ」
俺はあの女子軍団達と話すため、フェンスに近づいた。
そして、大声を出す。
「あの、すいませ―――」
「キャー!
河村くんが話したーっ!!』
「かっこいいーっ!!」
俺の声は虚しくも、女子軍団達の叫び声によって掻き消された。
その時、俺の中で何かが切れたような音がした。
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