「…バカだよな、あたし。

自分から別れを切り出したクセに、こんなにも悔やんでるなんて」



あたしは自分の部屋に掛けてあるカレンダーを見た。


…明日、いっちゃんがこの家を出て行く。



あたしが別れを告げた昨日、お母さんといっちゃんの会話を偶然にも聞いてしまった。



―――「親が戻って来いと言って来たので、明日俺はここを去って自分の家に戻ろうと思います」



「え…依知君?」―――



今でも、お母さんの困惑している様子が忘れられない。


いっちゃんは、「親が戻って来いと言っていたので…」と言っていたけど…

あたしが「別れよう」って言ったからだよね?



思い出した途端にあたしの目からは涙が溢れてきて、誰にも聞こえないように一人で泣き出す。



佳奈ちゃんに「婚約」という事実を突きつけられてから、あたしは泣いてばっかりだ。


あたしってこんなに泣き虫だった?



あたしが弱いせいで、こんな事になってしまった。



もう泣かないって決めても、涙は勝手に出てくる。



「…いっちゃん、離れていてもずっと大好きだから」



あたしは未だに外す事の出来ないラブリングを見ながらそう呟いた。




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