「…嘘でしょ?

どうせ、あたしといっちゃんを引き離したいだけでしょ?」



…これは嘘だよ。

いっちゃんが婚約なんて…絶対ない。



「この事は依知は知らないけどね」



「え…?」



佳奈ちゃんの発言に、あたしは大きく目を開く。



「依知のお父さんは佳奈のお爺様の会社の社員で、ある日会社で大きなミスを犯してしまった。

それこそ、依知のお父さんがリストラされるようなミスを。


…でも、「佳奈と依知を婚約させたら、会社を辞めなくていい」という事を条件に、お爺様は依知のお父さんを救ったのよ」



佳奈ちゃんの言っている意味が分からない。


あたしはもはや佳奈ちゃんの話の内容など理解してはいなかった。



「まだ依知と別れないって思ってるんだったら、それははっきり言って迷惑よ。

アンタと依知が別れなければ、依知のお父さんは職を失う事になるんだから」



あたし自身を守るなら…いっちゃんパパは仕事が無くなってしまう。


いっちゃんパパを救うなら…あたしは大好きな人を手放してしまう事になる。




あたし、どうすればいい?



あたしの恋にこんな壁が待ち受けているなんて、思いもしなかったよ―――




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