「休憩に入るぞ!」



青木の声によって、グラウンドからどんどん人が減っていく。

俺はサッカーボールを抱えたまま、グラウンドに立ち尽くしていた。



佳奈と雄太がこっちに来てからというもの、俺は佳奈にずっと付きまとわれている。


…正直言って、佳奈のあの性格は何とかして欲しい。



教室で毎日のように行われている佳奈のアプローチによって、俺は光里と過ごす時間が極端に少なくなってしまった。


…正直、光里の笑顔を見る時間が少なくなっている事が寂しかった。



「いっちゃん、どうしたの?」



サッカーボールを見つめながら真剣に悩んでいると、いきなり光里が俺の目の前に現れた。


…びっくりした。



「いや、別に。

光里こそどうしたんだよ」



俺はサッカーボールから光里に視線を移す。

そんな俺に、光里は皮が剥いてある状態のリンゴを渡してきた。



「りんご剥いたの!!

よかったら食べて」



光里はリンゴを俺に渡すと笑った。

…だけど、その笑い方は作り笑いみたいだった。。



そうだよな。

今一番辛いのは光里だよな。



…頼りなくて情けない彼氏でゴメン。



俺はグラウンドという事も忘れて、勢いよく光里を抱きしめた。




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