「ねえ、依知。
佳奈と付き合ってよ!」
「だから…俺には光里がいる。
お前マジでいい加減にしろよ」
…また始まった、この会話が。
いっちゃんはいつも断るけど、佳奈ちゃんはそれを聞こうとはしない。
呆れたクラスの人達もあたしに気遣って注意してくれるけど、それにも聞く耳を持たない。
「じゃあ…佳奈もサッカー部に入るっ!!」
…へっ!?
ふと耳に入ってきた言葉に、あたしは慌てて佳奈ちゃんの方へ向かった。
「それはダメ…!!」
あまり口出しをしないあたしが珍しく反応したのを見て、佳奈ちゃんは少し驚いている。
だけど…
「それは小原さんが決めることじゃないでしょ、マネージャーさん?」
あたしの抵抗は佳奈ちゃんには効かなかった。
…それはそうだけど。
佳奈ちゃんの反論に対して、あたしが下を向いて何も言えないでいた。
そんな微妙な雰囲気の中、あたしを助けてくれた人がいた。
「俺、サッカー部のキャプテンなんだけど。
正直、光里以外のマネージャーはいらないんだよね」
佳奈ちゃんに対してそう言い放ち、あたしに向かってピースをしてきたのは、たっちゃんだった。
悔しさに顔を赤くした佳奈ちゃんは勢いよく教室を出て行った。
.