あたしは屋上に来ていた。


季節はもう春なのに、冷たい風が屋上を包んでいる。


その風のおかげもあって、あたしの涙はもう乾ききっていた。



ゴロン、と屋上に寝転ぶ。



…なんか凄いライバルが登場したなあ。



佳奈ちゃんのさっきの言葉は、嘘ではないと思う。


…いっちゃんを見る時の目が、恋してる時の目、そのものだったから。



あたしは、佳奈ちゃんになんか勝てるのかな…。


あんなに可愛らしい子に勝てる気がしないよ。



「…でも弱気になったりしたらダメだよね?

ポジティブに行こう!」



あたしが気合いを入れる為に、起き上がろうとした時だった。



「何してんの?」



聞き慣れない声にあたしは戸惑いながらも振り向いた。



「な…なんで」



「よお…」



そこには、佳奈ちゃんのお兄ちゃんの雄太君がいた。


雄太君はあたしをジロジロ見ながら、どんどん近付いてくる。


あたしは恐怖心から、ジリジリと後ずさりをしてしまっていた。



…なっ何!?




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