俺は佳奈の言葉を聞くと同時に、腕を振りほどく力を強めた。


どんどん強くなっていく力に、佳奈は必死に抵抗している。



「河村君!

あたし、光里と福井君探して来るからっ!」



そう叫ぶと、宮本は教室を走って出て行った。



「俺も―――!!」



俺が宮本に続いて言いかけた時、タイミング良くチャイムが鳴った。

そして、一限目の授業である数学の教師が教室に入って来た。



「時間無くなっちゃった。

じゃあね、依知!」



俺に向かって笑顔を向けてきた佳奈は、自分のクラスに帰って行った。



俺は、佳奈から解放されて光里と宮本を追いかけようとしたが…。



「光里の事は玲に任せとこう」



この青木の言葉で、俺は授業を受ける事になった。



…頼むから雄太には関わるなよ、光里。


…宮本は光里を早く連れ戻してくれよ。



俺は不安から、数学の授業の内容はまったく頭に入らなかった。




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