「光里、元気ないな?

どうした?」



「な…なんでもない!」



あたしが作り笑顔を浮かべると、いっちゃんは眉を潜めながらも玄関を後にした。

あたしも急いでその後を追う。



いっちゃんにまで元気がないって言われちゃった。

でも、心配かける訳にはいかない…。



あたしはそっとブレザーを握りしめた。



そう言えば、こうやって二人並んで登校する事が、今は当たり前になったな。



あたしが隠れて微笑むと、小さな音と共に右手の薬指から何かが無くなった感触がした。


あたしは咄嗟に音がした方を向いた。



「あっ…!」



音を出して落ちていった物は、あたしが誕生日にいっちゃんから貰った…ラブリングだった。


呆然とするあたしを見て、いっちゃんがあたしのラブリングを拾ってくれた。



「おいおい…。

大事につけとけよ?」



「ご…ごめん」



…でも、どうして指から外れたんだろう。


今まではこんな事なんてなかったのに…。




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