そして、あっという間にバレンタイン当日。
あたしはソファーに座るいっちゃんの隣に座りながら、震える感情を必死に抑えていた。
「俺のチョコは?」
「玲から連絡が来たらあげる!」
不安いっぱいのあたしは、いっちゃんからの言葉に答える余裕すらない。
険しい表情のあたしの隣で、「俺は、宮本に負けたのか…」といういっちゃんの呟きが聞こえた。
「…宮本はあのチョコ、青木にあげるんだろ?」
「…そうなの。
って、なんで玲がたっちゃんにチョコをあげるって事知ってるの!?」
いっちゃんの言葉に、またもや我を失うあたし。
…もしかして口を滑らせた?
「勘だよ勘。
宮本の行動見てたらなんとなく分かる」
「…か、勘ですか」
あたしは口を滑らせていなかった事に安心した。
…やっぱり、いっちゃんって観察力が凄いな。
あたしがホッとした瞬間、突然ケータイの着信音が鳴った。
震える手で、あたしはケータイを開いた。
「玲だ…」
着信先は、玲のケータイ。
あたしといっちゃんの緊張が高まる中、あたしはそっと通話ボタンを押した。
「もしもし…」
.