あたしは玲の言葉を聞くと、息を飲んだ。
「…あたし、青木君、いや…「達也君」と一緒に居た時、いつも二人で食べてた物があるんだ」
「…いつも食べてた物?」
あたしは言葉の続きを想像する。
玲の口から出てきた言葉は、あたしの想像通りだった。
「…それが、ガトーショコラ。
達也君は忘れてしまってるかもしれないけど、あたしにとっては大事な思い出だから…。
あたしの事を思い出して欲しくて、河村君に無理言っちゃったんだ」
えへ、と舌を出して笑う玲。
あたしはそんな玲を見て心が締め付けられる思いになった。
「お待たせ…って何だよ、このしんみりした空気は!」
あたしが口を開こうとした瞬間、トイレから帰ってきたいっちゃんの声が聞こえた。
いっちゃんはあたしと玲の間に流れる空気に困っているようだった。
あたしと玲は顔を見合わせると、いっちゃんに向かってあっかんべーのポーズ。
「なんだよ、秘密ってか」
そう言ういっちゃんは苦笑い。
あたしは玲の方を盗み見た。
…頑張ってね、告白。
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