去った理由、それは…。

ただ単に、自分の気持ちを認めるのが怖かった、ただそれだけ。



小心者なんだよね、あたし。



だから…今のこの気持ちが凄く怖い。



この高校に「達也君」が居るって分かった時は、単純に嬉しかった。



だけど、その気持ちの反面、あたしの存在に気付いてくれない「達也君」が居た。



…あたしってその程度の存在だったんだ、って思う度に胸が苦しくなった。



だから、「達也君」という存在と隆を重ねていたのかもしれない。



「…もう、隆に関わることはないよ。

少しの間だったけど、あたしに思い出をくれてありがとう」



あたしは言いたい事を一気に言い終えて、その場を去ろうとした。



「…分かった。

もう一人を幸せにしてみせる。

玲がそんなことを思ってたなんて少しビックリした。


…俺からも言わせてくれ。

ありがとな」



そう言うと、隆はあたしに背を向けて歩き出した。



あたしはずっとその背中を見続けていた。



…隆、ありがとう。


あたしも新しい恋に向かって、頑張るから…。




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