隆が此処に来てる…。


そう思うだけで、あたしは胸が痛くなった。




…ちゃんと、目を見て話せる?

…自分の気持ちを言える?



「………っ…」



あたしはいつの間にか、隆が待っている校門まで来ていた。


さっきまで走っていた為、身体中が酸素を欲しがっている。



…話しかけるべきだよね?



あたしが息を整えようとしていると、隆があたしの存在に気付いた。



「玲………」



「た…かし……」



久々に呼ぶかつての彼氏の名前。



隆はあたしに笑顔を向けている。


…この笑顔を見るのは、いつぶりなんだろうか。



あたしは手に握り拳を作ると、勇気を振り絞って隆に近づいた。



「久しぶりだな、玲」



「そうだね…」



隆の声はやっぱり変わっていなかった。

低くて、かすれた声。



周りの人達は、あたし達の事をカップルとでも見ているのかな?



…でもね、あたし達は心が繋がっていない。



「あのな、玲…」



突然呼ばれた名前に、あたしはゴクリと息を飲む。



「俺と…もう一度だけやり直してくれないか?」




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