あたしが向かっていたのは、屋上だった。
辺りはシーンと静まり返っている。
あたしはそっと玲の方を向くと、本題を切り出した。
「…何かあったでしょ」
あたしの言葉に玲の目に涙が溜まっていく。
耐え切れなくなった玲は、あたしに抱きついて口を開いた。
「…隆と別れた―――」
「え…?」
事実を告げたことにより、あたしの身体に絡まる玲の手は、より一層力が入る。
「隆…浮気してたらしくて、もう片方の女の人に赤ちゃん出来ちゃったんだって…」
次々と玲の口から出てくる衝撃発言に耳を疑った。
「…隆君はその女の人と結婚するの?」
「…そうみたい。
あたしバカだよね?
浮気するような、サイテー男と付き合ってたんだから」
そう言って笑う玲は悲しそうで。
あたしは玲を抱きしめ返した。
「…無理しなくていいよ、玲。
泣きたい時は泣けばいいんだよ。
あたしが玲の想い、しっかり受け止めるから」
あたしは玲に向かって呟く。
すると、玲はあたしにもたれかかって泣き始めた。
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