「…いっぢゃ…ん、ティッシューっ!」



「はいはい…」



俺は光里にティッシュを手渡した。

光里はティッシュを奪うと、目を急いで覆う。



光里は只今号泣中。


その原因は…



「奈美って美人さんなんだな」



「那知こそかっこいいよ」



…今日放送されてる、兄貴と奈美さんのドラマ。



こんな会話だらけのこのドラマに、泣ける要素がどこにあるのだろうか。


ただのバカップルじゃねーかよ。



俺は光里に気付かれないようにそっとため息を零す。



やっぱり、自分の兄貴と奈美さんの恋愛を見るっていうのには、かなりの抵抗がある。


……兄貴の恋愛とか観てるこっちが恥ずかしくなってくるわ。



もう一度ため息をつこうとした時、光里のおばさんが俺を呼んだ。



「依知君、お電話よ」



「あ…はい」



俺は急いで電話台に移動すると、受話器を取った。



「もしも―――」



「やほーい、愛しのBaby?

今日もお月様の輝きより美しい、僕、河村那――――」



俺は声を聞いた瞬間、咄嗟に電話を切った。




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