「俺さ…」
すると、黙っていたいっちゃんがいきなり話し出した。
あたしは静かにいっちゃんの言葉を待った。
「正直言って、光里の家に居候が決まった時、…不安だったんだ。
俺は、光里に会いたくて会いたくてしょうがなかった。
だけど、俺たちが離れ離れになって十年という月日が流れて、俺がいきなり光里の前に現れても光里が困るだけなんじゃないかって。
最悪の場合、俺の事なんか忘れてるんじゃないかって、そう思ってた。
だけど、お前はちゃんと俺の事を覚えていてくれた。
本当に嬉しかった。
お前の中に「俺」という存在がまだ残っていたから」
そして、いっちゃんはあたしの唇に優しいキスをくれた。
なんだか、数時間前まで悩んでいたことがバカみたいに思えてきた。
「魅力ない」
「興味ない」
そんなことはどうでもいい。
例え、キスする回数が少なくても、いじわるをしてこなくても、大切なのは「お互いを想い合う気持ち」なんだね。
このキスからも、よく伝わってくるよ。
いっちゃんがどれだけあたしのことを想ってくれているかを。
―――これからも、あたしはいっちゃんを愛していくからね。
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