…何の日だっけ?

あたしの小さな脳みそには、どうやらその日には何も入っていないらしい。



「…分かんない」



あたしの言葉に、いっちゃんの眉がピクッと動く。



「本当に分かんねーか?」



「う…うん……」



「光里の誕生日だろうが」



…たん、じょう、び。

…たん、生、日。

…誕生、日。



「…あたしの誕生日っ!?」



そうだった。

十月十日、小原光里、十七歳のバースデイ。

すっかり忘れてた。



「…まったく、自分の誕生日覚えてないとか、さすが光里だな」



「…どういうこと?」



あたしが恥ずかしすぎて顔を真っ赤にしていると、いっちゃんがからかってきた。



「とにかく、五日後は空けとけよ?

俺が、光里の誕生日を最高なもんにしてやるから」



…今、なんて?



「いっちゃん、あたしの誕生日、一緒に過ごしてくれるの?」



「当たり前だろ。

俺はお前の彼氏なんだから」



今みたいな、さらっと「彼氏」発言に、あたしの心臓は動きっぱなしなんだよ?



「…気を取り直して、部活に行くか」



「…うんっ!!」



あたしが十七歳になるまで、あと五日。


最高の誕生日を期待してるよ、いっちゃん?




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