あたしを連れ去ったお客さんの正体は、



「意味分かんねぇんだけど…」



いっちゃんのお兄ちゃん、那知君だった。


那知君を見たいっちゃんは、当然のごとく固まっている。



そりゃ、驚くのも無理ないよ。


居るはずのない人がここにいるんだから。



あたしだってもちろん驚いた。


最初はフード被ってたし、声変わりをしてて、あたしが知ってる頃の声じゃなかったから分からなかった。

でも、フードを脱いだらいっちゃんにそっくり。


顔の輪郭も、目尻も、キリッと整った眉も、何もかもが。



あたしは那知君を見ながら、彼の成長ぶりを感じていた。



大人っぽくなって、奈美さんと結婚するって言われても、誰もが「お似合い」って感じるくらいのオーラがあって…。


正直、那知君がこんなにもかっこよくなってるなんて思ってもみなかった。



「…光里さらって行ったのは兄貴か?」



ようやくこの状況に慣れてきたいっちゃんが呆れたように尋ねた。



「うん。

びっくりさせようと思って!」



「…ハァッ……。

本気でびっくりさせんなよ。

光里さらわれたって聞いてすごく心配してたんだからよ…」




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