「光里は俺の苺あげるっての」



そう言って、いっちゃんはあたしに口に突っ込んでくる。

あたしは咄嗟に口を開いて、苺を食べてしまった。



…ちょっと待ってよ?

これって、つまり「あーん」みたいな感じだよね?


あたしは急に顔が赤くなるのを感じた。



「―――っ!?」



いっちゃん、何してるの?

お父さんとお母さんが目の前で見てるのに!!


あたしは赤くなった顔を手で覆った。



一応、お父さんとお母さんはあたし達が付き合ってること知ってる。

報告した時は、誰よりも喜んでくれた。



だけど…今のはないでしょ?

絶対冷やかされるっ…!!


そう思っていたとき、お母さんが口を開いた。



「ほんとに依知君ったら、優しいんだから」



へ……??



「光里のために自分の苺あげるとは…

依知君も立派になってなあ」



と、お父さんも一言。



突っ込むところ、そこかよ!!

というか、あたしがいっちゃんに苺取られたことはなんにも言わないの?



ほんと、うちの親は掴めない。

普通に接することができるいっちゃんがすごい。




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