あたしは去っていった奈美さんの方向から顔を背けて、いっちゃんの方を向いた。


あたしの瞳に映るいっちゃんは、いつもになく真剣な顔をしていた。



―――ドキン…


いっちゃんと見つめ合うあたし。

あたしの心臓が高鳴りを始める。



改めて、いっちゃんのかっこよさを認識した。

こんな人と見つめ合ってると、なんだかおかしくなりそう。



「俺さ…光里の家に居候してきた時の理由覚えてるか?」



ふと、見つめ合った状態でいっちゃんが呟く。

あたしはいっちゃんから視線を外して、自分の手のひらを見た。



「「この街に戻りたかったから」でしょ?」



「なんで、この街に戻りたかったか知ってるか?」



確かに、それは前々から思っていた。

わざわざいっちゃんが戻ってきた訳。



「…分かんない」



あたしが首を横に振ると、次の瞬間信じられない言葉が聞こえてきた。



「…お前に、光里に会いたかったから。

光里をずっと愛しく想ってた。


俺が光里と離れ離れになってからも、ずっと光里だけを想ってた。



光里…好きだ……」



…いっちゃんはそう言って、あたしの顔を見つめてきた。




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