スタッフがカウントダウンをすると、役になりきった奈美さんが大声で叫んだ。



「あたし、あなたのことが好きだって何度も言ってるでしょ?」



奈美さんは真剣に演技をしている。

俺も、迫力を出さないとな。



「だから、何度も言ってるだろ。

俺はもうお前と付き合ったりしない!」



俺は思いっきり奈美さんを睨みつけた。

こんな感じでいいのか…??



「……ねえ、好きなの…!!」



どんどん奈美さんの顔が近づいてくる。


本当はするふりでも嫌だけど…

ここは我慢するしかない!!



俺は、必死にキスのふりを耐えながらカットがかかるのを待っていた。



「カット!!!!」



カットがかかった瞬間、奈美さんが俺から離れていく。

俺も深く息を吸う。



すると、監督が俺のほうに近づいてきた。



「初めてにしてはなかなか上手かった。

今回は巻き込んですまなかったな」



「いえ、こちらこそこんなにも貴重な体験ありがとうございます。

それでは、俺そろそろ行くんで」



そう監督に告げると、俺は衣装を返して海へと向かった―――




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