「あったあった。あれは確か、えーっと」

 ボールを持ったまま考え始めた。

「投げながら考えてくれよ。待ってる俺恥ずかしいじゃん」

 グローブを構えている身にもなってくれ。

「おぉ。悪い悪い」

 あまり悪びれた様子もなく、父親はボールを投げた。

「えーっとなぁ」

 しばらく投げ合いをしながら、思い出しているようだった。

 ボールがグローブにおさまる音が気持ちいい。肩を痛めないよう、気を付けながらボールを投げた。

 少しした時、コツコツとヒールの音がした。