時 空 堂


 ザーッ、ザーッと、機械音が少し流れた。

「・・・あれっ?これ入ってる?」

 明るい女の声、恭華だ。

「入ってるって、何入れるんだよ。俺声出すの嫌なんだけど」

 こっちのガラガラ声は俺だ。

「あははっ、潤の変声期記念にこれ残しとこうよ。遅めの変声期記念。その声すっごく、面白ーい」

「なっ、馬鹿にすんなよ」

「潤、もっと話してよ。記念になんないじゃんか」

「何話すんだよ」

 俺の部屋で二人じゃれ合いながら、これを録音していた。思い出すだけで胸を締め付けられる。苦しい。

「えー、自己紹介とか?」

「いやいや、これ録ったところで何になるんだよ」

「思い出になるでしょー?私たちが倦怠期になったりしたらさ、あー、こんな時もあったなーとかって話題増えるでしょう?」