時 空 堂


「何も思い出さないか?」

「何も思い出せない。そもそも潤の言っている人は本当に私なの?違うかも知れないでしょう?同じものを持っているからって、違う可能性の方が高いでしょう?」

 刹那はそう言った。胸が苦しい。

「そんなことない、刹那っ」

「そう責め立てるな。言っただろう。記憶は綺麗に消し去っている、と」

 暗闇の中から、クロがゆっくりと現れた。

「クロ」

「潤、お前は何故そんなに刹那にこだわるのだ?女などいくらでもいるだろう?それとも、刹那ではなく、生きていた時の人間にこだわっているのか?」

「・・・そうかも知れない。でも、刹那のこと放っておけなかったんだ。あいつだと、予測する前から」

「・・・何故?」

 クロではなく、刹那が問いかけてきた。