「頼んだからな、クロ。・・・じゃあ、刹那ばいばい」

 クロに念を押し、刹那を見た。何か言おうと口を動かしていたが分からなかった。

「俺のせいでごめん」

 一歩一歩ゆっくりと扉に近付いた。出たくない、離れたくないと体が悲鳴をあげているようだった。胸が締め付けられる。

 あと一歩で店の外というところで振り返り、刹那を見た。肩で息をし、虚ろな目で俺を見る辛そうな刹那。俺のせいだと思うと、刹那に責められているようで思わず目を背けた。

「じゅ、ん」

 掠れた声で刹那は俺の名を呼ぶ。目を合わせるのが怖い。

 俺のせいでごめん。辛い思いさせてごめん。助けてあげられなくてごめん。

「刹那ごめん」

 扉を開き、最後の一歩を踏み出して、振り返ることなく店を出た。