数秒しか経っていないであろう時間が何分にも感じられる程、私は焦っていた。早くっ、お願い。
「もしもし、お待たせしました。相川です」
少し低い男の人の声。相川弁護士の声だった。
「あの、上野です。わかりますか?」
「桜さんですね。分かりますよ。どうしたんですか?そんなに慌てて」
なるべく冷静に話そうとしていたけど、やっぱり無理だった。
「今すぐ病院に来てもらえませんか?」
「病院?そういえば桜さん病院に入院してらっしゃいましたよね?」
「はい。そのことでご相談が・・・。今から無理でしょうか?」
「今からですか?」
「はい。ご無理は重重承知なんですが、私の時間がないんです。お願いします」
電話越しに私は思わず頭を下げた。



