電話の側に置いてあった電話帳を手に取り、電話番号を調べた。探し相手は弁護士。旦那さんの友達の息子さんで、旦那さんが亡くなった時にもお世話になった人。その人ならきっと助けてくれる。なんとかなるかもしれない。

「お願い、出て」

 すがるような思いで、電話にお金を入れ番号を押し、受話器を耳に当てた。お願いっ。

「はい、こちら相川弁護士事務所です」

「あっ、あの、相川直也さんいますか?」

「すみませんが、どちら様でしょうか?」

「私、上野桜と言います。主人の時にお世話になったんですが」

 そう言うと、少々お待ちくださいと言って、電話が保留音に切り替わった。