「あれ、クロは?」 いつもならここら辺でいやみの一つでも言ってくるのに、今日はその声が聞こえない。 「居ないの。出かけると言ってたわ」 刹那はお茶を運びながら言った。 「クロが出かけるなんて珍しいな」 もしかしたら、俺がここに来始めてから初めてのことかも知れない。 「そう?結構居なくなるわよ。まぁ、夜中に居ないことが多かったから日中は久しぶりかも知れないけれど」 そう言いながら、刹那も椅子に腰をかけた。