「クロ」

 刹那と共に奥に行こうとしていたクロを呼び止めた。

「なんだ」

「刹那をちゃんと見ていろよ」

「わかっている。今日はもう帰れ」

 そう言ったあと奥に入っていった。暗く見えない奥からは物音すらしなかった。

 このまま待とうかとも思ったがクロがあぁ言った以上、もう出てこないだろう。そう思って時空堂を出た。

 だいぶ暗くなったあたりを見回した。足早く帰宅しているであろうサラリーマン、友達と仲よさそうに歩く高校生。こんな当たり前の光景が嫌いだ。この時間帯が嫌いだ。