「元の場所が不服だったから、ここに来たいと願ったんでしょう?」

 落ち着いた声で、俺をなだめるように言った。

「違うっ、違うんだ。俺が望んだのはこんな世界じゃない。俺はただいい大学に行って、あいつから離れたかっただけなんだ。早くしてくれよ。助けてくれ」

 早口で彼女を捲くし立てる。彼女は眉一つ動かさない。

「そう。望んだ世界じゃなかったの」

「そう言ってるじゃないか。お願いだ。早くしてくれ」

 扉の外が気になって足踏みをする。じっとしてられない。早く逃げなくちゃ。