腕を振り上げ、俺に向かって突撃してきた。とっさに横によけ、近くにあった枕を投げつける。

「うわぁぁぁぁぁあ」

 壁に激突したあいつから逃げるように走った。こんなときに限って足が震えてうまく走れない。転げるように廊下に飛び出した。

「待ちなさいっ」

 焦る俺と違い、あいつはすばやく追いかけてきた。後ろを少し見ると、笑顔で包丁を持って、走ってくる。なんで、なんでこんなことになったんだ?どうして・・・。

 あと少しで玄関というとことで足がもつれて、頭から壁に激突した。痛みを堪え立ち上がり、走ろうとしたその瞬間、二の腕に激痛が走った。

「うああああああ」

 腕に熱が纏う。鈍痛のような痛みが俺の左腕を覆った。あれで切られたと分かった。