「なっ」
鋭利な刃先が俺の方に向いている。慌てて後ろに下がった。だが思った以上に下がるスペースはなく、すぐ壁に背中ぎ当たった。
「ちょ、何考えてるんだよ」
「あら?逃げなくても大丈夫よ、すぐ楽になるからね。可愛い息子を一人で、あの人のところに行かせないわ。私もすぐに行くから。あぁ、やっと会えるのね」
笑みをこぼしながら、じわりじわりと近寄ってくる。
「俺は死にたくない、やっと人生やり直せるのにっ」
「ふふふっ。やっと会えるわぁ。家族が揃えるのねぇ」
もう俺の話なんて聞こえていなかった。
「さぁ、恭ちゃんおとなしくしなさい」



