時 空 堂


 堰を切ったように次から次に言葉が溢れてくる。もう限界だ。

「父さんはもう死んだんだよ。いい加減目覚ませよっ。俺はここを出て行くから」

 俺の話を聞いたあと、黙ったまま遠くを見つめていた。どうしていいかわからず、ただ立ち尽くした。しばらくお互いだんまりが続いた。外の車の音がよく聞こえる。

「・・・そうね。あの人は死んだのよね」

 こいつは自分に言い聞かせるかのように小さな声で呟いた。

「ふふっ、はははははははははっ」

 急に狂ったように笑い出す。そして立ち上がり、俺に近付いてくる。

「恭ちゃんにあの人の代わりになってもらいたかったのに、もう無理そうね」

 顔つきが変わった。さっきまでの甘えた声と違って、狂気を孕んだような少し低い声になった。