「恭ちゃん。まだ起きないの?」 不快な奴の声で目が覚めた。 「ん。起きるよ、母さん」 喚かれないよう、腹のうちとは違う声を出す。 「よかった。もうお昼前だったから。お父さんが生きてたらカンカンに怒ってたでしょうね」 そう言いながら、何かを思い浮かべてくすくすと笑っていた。 「そうだね」 気持ち悪い笑みが不快だった。 「ねぇ、恭ちゃん」 そう言いながら、両手を伸ばしてきた。