そのコップは空(ソラ)だった。




悲鳴が上がる。


俺、死んだのか?



ゆっくり目を開けると


目の前に人盛りが出来ている。




そして一人の男が叫んだ。


「救急車!


誰か救急車を呼べ!」



目の前に血痕があり


それがたらたらと群衆のほうへ導いている。



車はガードレールにぶつかり停止していた。






あのとき…


パッと辺りが暗くなった瞬間


ふわっと誰かに押された…。



それがソラだったら…



「ソラ…?」




小さな声で呼んでみる。



ソラはどこにも居ない。




やっぱり…


あの群衆の中に…



急に恐怖心に襲われた。



俺が…



俺が…





ソラを殺したんだ…。





怖くなって


全身が震え出して



俺は群衆に背を向け


逃げた。



俺は…


俺は…






途中、何かを踏んで滑って転んだ。



イチゴの柄のレジャーシート。




それはソラが『行かないで』と言っているようだった―。