そのコップは空(ソラ)だった。



「まったくあんたたちは・・・」


ずかずか私たちに近寄ってくる久本先生に


私たちはたじろいで相手から体を離した。



恥ずかしさよりも見られてしまった失敗。



久本先生が目の前に立ったとき


私たちは廊下に立たされた子供のように


しゃきっとした姿勢で立っていた。




「黒住文也!」


「はいッ!!!!」



黒住くんは野球部のように威勢良く返事をした。


やれば出来るじゃん、っと偉そうに感心してしまう。




久本先生は彼を呼んでからじろじろと彼の体を観察する。


その異色な光景に耐え切れなくなったのか彼が口を開いた。



「あの…先生ってそういう趣味で…」


「何か言った?」


「いえ何も申してません!!」


謙譲語も使えるんだね。


彼のことをちょっと見くびってました。


反省。