「なんで突き飛ばすんだよ!!」
俺はつい怒鳴ってしまった。
それから止まらない。
まるで犬みたい。
「キスなんかいつしたって変わらないだろ!!
少女マンガの読みすぎなんだよ!!」
俺のファーストキスはいつだっただろう…。
何人もの女と付き合って一線を越えていた。
その記憶の中のどっかにあるかもしれないが
今、遊び女の事を思い出すのは吐き気がする。
ソラの目には大粒の涙がたまっていた。
そうだった。
こいつはカレシと付き合ったことがない。
ファーストキスさえしたことなかったんだ。
きっと少女マンガの恋する主人公を自分に例えていたのであろう。
そして、"キス"ということに誰よりも憧れを抱いていた。
それを俺がこんなかたちで・・・。
目が覚めた。
極悪人の心に少しの純粋さが芽生える瞬間だった。
「ごめん。」
俺はギュッとソラを抱きしめた。
抱きしめた時、ソラはビクッと反応して
心臓の音を速く大きく鳴らす。
こうやって男に抱き締められるのも
初めてなのか・・・。
「ちゃんとお前のこと大事にするよ。」
これは本音。
俺より年上なのにこんなちっこくって
男慣れしてないソラが初々しくて
とっても愛らしかった。
そんな純粋さが俺の邪悪な心を刺激する。
『サトルの鼓動、速いよ…?』
それはお互い様。



