目の前にいるのは

別人かもしれない



俺の知りすぎて知らないもの



『好きだ』と言った自分がバカだったのかもしれない



昨日の昨日まで二人して参考書を広げ


互いに問題を出し合っていたのは夢かもしれない




いや夢だ



全部が夢なんだ




泣け叫ぶ人々が周りを囲み

その中央で彼女は冷たく目をつぶっていた




まるで俺たちをあざけ笑うかのように




彼女が憎らしい…





だけど、何もせずその場に立ちすくんでいた自分が


もっと憎らしい…




その日


俺は大切なものを失い




自分さえも失った