「……明日からは、この身の全ては、二の宮様に捧げる覚悟なれば……君の好意も、私の思いも、今宵限りのこととして、忘れねばならぬのです……」

一の姫がそのようにおっしゃいますので、一の君も、お言葉をその若い胸の内におとどめになって、その夜は、お二人、寄り添われたままに、空を渡る月の姿をお眺めになって、お過ごしになられたのでございます。