「姉上……」

一の君が一の姫のもとをお訪ねになるのも、くだんの日以来間遠になっておりましたので、一の姫は、この日も訪れがないものとお思いになっておりましたので、その忍ぶお声をお聞きになりましても、はじめは、空音かとお思いになられて、

(いつも君のことを考えてばかりいるので、このように声まで聞こえてくるのですわ……)

と、深く息をおつきになられるのでした。