今一度、御簾の裏表に隔てられてしまいますと、最初よりもますます距離遠くお感じになって、一の君の深く物思いにお沈みになるところに、

「ね……一の君、覚えていらっしゃるかしら」

一の姫は、やわらかく撫でるようなお声でお尋ねになります。