「一の君……私は、左大臣家の姫。そのさだめからは、逃れられませぬ。いえ、逃れてはならぬのです」

すす、と、お離れになる気配に、一の君は、姉姫の陰をおもとめになって、今にも、と、その腕をおのばしになりました。

御簾をうちわけて、一の姫の寝間へと、一足おさしいれになりましたら、あとはもう、とどまれるはずもございません。