沈黙に耐えきれなくなったのか、
七海が切り出す。

「…ね、訊いても良い?」

「ん?」

「その、足の事。」

「あぁ…どうぞ。」

「何が原因だったのかなって。」

「…事故だよ。交通事故。
両親が運転してた車が事故に遭って、
俺も後ろに乗ってたから怪我したんだ。」

「そうなんだ。」

「両親が死んで、俺は
足の怪我だけで済んだけど
それ以外に色々なものを
失ってる気がするよ。」

尚翔はそう言って
立ち止まり、下を向いた。

「尚翔くん…。」

七海は後悔した。

尚翔にこんな悲しい顔をさせる位なら
訊かなきゃ良かった、そう思った。

「…ごめん、
思い出させちゃって…。」

「いや、七海が謝る事ない。
俺が許可しておいて、
自分で嫌な気分になってるだけだ。
気にするな。」

「うん…。」

「行こう…日が暮れる。」

「解った。」

二人は再び歩き出した。