夕方、教室を閉める直前にスーツ姿の高波さんが駆け込むように入ってきた

「先生にご相談がありまして」

笑顔で僕に近づいてくる

「もう今日はおしまいよ」

帰り仕度を整えた飯島さんが、冷たく高波さんに告げる

「飯島さん、あとは僕がやるから
先にあがってください」

僕は、敵意むき出しの飯島さんに声をかけた

「でも…」

「大丈夫ですから
母には少し遅れると伝えておいてください」

「え、ええ、わかりました」

飯島さんは納得のいかない顔で、教室を出て行った

「先生、もしかしてこの後、ご用事が?」

「あ、ええ、平気ですよ
お見合い相手の方と、自宅で食事をするだけですから」

僕はにっこりと笑った

母が勝手に用意した席ですけどね…

椎名さんと須山さんには大変申し訳ない思いで心苦しいですよ

母の勝手な陰謀に、巻き込まれてしまって