薄紅梅に、くっきりと浮かんだ墨跡をお眺めになって、一の君は、深くため息をおつきになりました。

そこへ、

「あら、一の君、おひとりで何をなさっていらっしゃるの?」

一の姫が、ひょっこりとお立ち寄りになったものですから、一の君は飛び上がるほど驚かれて、書き散らした薄様を、握りつぶしておしまいになりました。