風に乗ってかすかに香るのは、なにかが大量に焼け焦げた臭い。

それがコンクリートなのか鉄なのか、はたまた肉なのか、真人には予想しかできない。

「おいっ、死にたいのかって言ってんだよ!!」

「っ、放せよ……!」

そう、男が真人の腕を掴んだ時――

轟音が二人の、そして逃げ惑う人々の頭上を、通過した。

音と影に驚き、およそすべての人々が空を見上げる。

炎を纏っているかと見まごう、深紅の巨大な西洋鎧が、赤く淀んだ空を飛翔していた。