気合いを取り直したギルディウスが、俯けていた顔を正面に向けた。見えるのは、巨大な空洞。早い話が、ワイアームの喉である。

「るぅっぁぁぁああああ――!!」

ブォォォォォ――ッ!!

空気を巻き込みすり潰すような音をあげ、クリムゾン機の両肩に装備されているガトリング砲が吠えた。

一拍遅れて、腰部や脚部のミサイルポッドが白い煙を尾にして飛び出す。

狙いなんかつける必要がない。

全弾必中だった。

やすりで窓ガラスを擦るような金切り声で慟哭し、ワイアームが頭を振り上げる。

「ぅぉわっ!?」

その最中で、下顎に掬い上げられたギルディウスが、宙に放りあげられていた。

が、レンの駆るクリムゾン機が身軽なのは先の戦場で知れたこと。たとえ重装備を施されていようと、それで姿勢制御が疎かになるレンではない。

宙での錐揉みを制したレンは、

「はんっ」

と眼下の光景を鼻で笑った。正義の味方とはほど遠い、凶悪な、口の端を吊り上げる笑みだ。

ワイアームは口から――いや喉から、噴水のように血を吐き出して、痛みに悶え、もがいていた。まるで、大地で暴れるホースのようである。