『――トレーシングシステム起動!!』

と、だみ声が命じた瞬間、コックピットシートから大量のコードが溢れ出した。

「な、なんだ……?」

機械やシステムというより、まるで触手のようなその群れは、

「うっ、がっ……!?」

次から次へと、真人の首筋、背中、腕などへ、注射針のようなプラグを突き刺してくる。

電気が走ったような痛みが全身を駆け巡り、真人は軽く痙攣しながら、悶えた。

(なん、なんだ、これ……っ!!)

痛みをこらえながら、真人は思い出す。

野々村に案内された先には、巨人がいた。

記憶に焼きついている深紅の巨人ではなく、闇の底から実体化したような、漆黒の武者だった。

「これに乗れよ。お前のほしがってたもんだ」

と野々村は言った。

いったいなぜ、彼は自分を逃がし、なぜ、ここまで案内してきたのか。

666ではない、と言っていたのに、ここまでのあらゆるセキュリティを容易く抜けて。

なぜ。どうやって。どうして。

疑問というより、もっと深い、謎だった。

だから、「お前、何者だ」と二度目になる質問をしたが。

「お前の思ってる通り、不審なヤツさ。気にするな」

やはりごまかされた。