最後に「いいな?」と、支倉がわざわざ確認してくるのは、彼の優しさである。

魔物らとの戦争が始まったのが十九年前。

そしてレンは十七歳。

レンにとって、世界は生まれた時から血なまぐさかった。

生き残るためなら、戦うことになんのためらいも覚えない。違和感もない。

だが支倉は、『自分よりも若年の者が戦線に立つ』ことが、心苦しいらしい。

ふ、と、レンは笑った。振ったかぶりの動きに合わせ、ツインテールが揺れた。

どうして妙なところで支倉は優しくなるのか。

これだから、支倉を嫌いになれないでいる。これだから、『好きではない』止まりなのだ。

いっそ、思いきり嫌ってやりたいところなのに。

「そんな確認は要んないわよ。私は戦いたいの。そして戦えるの。さ、早く言ってちょうだい。出撃って」

『……いいだろう』

そして、支倉が言葉を続ける前に――

「さって、行こっか。――クレナイ」

くい、と、メガネを押し上げる。

『ギルディウス・マキナ、出撃』

瞬間――

ドシュゥッ!!

という強烈な擦過音と紫電をレールに残して、ギルディウスはトンネルの闇へ突貫していった。