いまだ顔すら見せない何者かへ、言った。

「いいか、よく聞け。現在我々は、二体のベルヴァーと交戦中だ。貴様には、上空のベルヴァーを叩いてもらう――赤沢?」

「はい。計算上、出撃カタパルトからの射出の勢いと、ギルディウスのブースターを全開にして得た速度から、弐号機装備の斬鬼刀を振り抜けば、上空ベルヴァーの撃破も可能かと。ただし、パイロットへのGは許容数値オーバーです」

「上等だ」

支倉と赤沢だけが、淡々とやり取りを進める。

もはや、ほかに道はない。

東海林小佐以外のスタッフが、自らの仕事を思い出し、我に返る。

鉄面皮の女性士官だけが、孤立した空間となった。

支倉が命じる。

「では部外者。お前には命を賭して、ギルディウスに乗ってもらう。今さら拒絶は認めん。」

『――命なんて、要らない』

「ほう?」

『彼女の復讐ができるなら、僕は、悪魔にだってなるさ』

「よかろう。――赤沢」

「は。ギルディウス弐号機、予定射出口到着しました。いつでも出せます」

そして――

「よし。弐号機のトレーシングシステム起動!!」

「了解」

遠隔操作で、ギルディウスが本起動を始めた。